2024年度 理事長所信

 

 

一般社団法人 三島青年会議所

2024年度理事長 鈴木 勇樹

 

未来永劫

~想いをつないで未来を創ろう~

 

 

 

1. はじめに

 終戦から僅か4年を経た1949年、戦後の混乱した状況の中で、「新日本の再建は我々青年の仕事である」という強い想いを抱いた青年たちによって、日本経済の発展に貢献する団体として日本の青年会議所は誕生しました。当初、僅か30人あまりで始めた組織は時代の変化とともに各地域に広まり、1962年に217番目のLOMとして三島青年会議所が設立されました。そして2024年、63年目を迎えることができるのも、ひとえに、私たちに想いのバトンを弛むことなくお渡ししていただいた先輩諸兄姉のご尽力と、日ごろより私たちの運動に対してご理解とご支援、ご協力をいただいている行政並びに関係諸団体、地域住民の皆様のお陰であると、心から敬意と感謝の念に絶えません。この62年間の歩みの中で、多くの成功と苦労、そして試練があったと思います。近年ではパンデミックが発生し、時代の変化に即した体制づくりと運動が求められました。その都度、私たちは原点に立ち返り、使命を胸に着実な運動を積み重ねてきました。しかし、昨年、三島青年会議所を揺るがす憂慮すべき事態が発生しました。それは、これまで長年に渡り築き上げてきたものが一瞬にして瓦解されたような衝撃であり、私自身、悲憤に満ちた気持ちとなりました。私たちの自己満足的な判断ではなく、果たして、「地域の皆様が本当に三島青年会議所を必要としているのか。」この疑問に向き合うべく、皆様の率直な声をお聞きするため関係各所に訪問させていただきました。訪問した地域の人びとの言葉として、JCが発起した運動が人びとに必要とされ、今でも輝き続けていること、そして、先輩諸兄姉をはじめとしたメンバーがJCの経験を活かしてあらゆる場面でリーダーシップを発揮し、人びとを牽引していること、さらに、災害時には、JCが迅速に現場に駆けつけ、被災者の皆様を支援できたことなどのお話しいただく機会を得ることができました。それらが、この62年間における運動の成果であり、積み重ねであったと感じ、それこそが三島青年会議所そのものであり、“一つの結晶体”として地域から高い評価をいただいていると感じ入りました。多くの訪問先で掛けていただいた温かいお言葉を受けて、私は事態に対する罪悪感に似た感情を抱きながらも、先輩諸兄姉の築き上げられた輝かしい信用に、今でも守り支えられていることを知ることと同時に、私たちの運動が地域の皆様から期待されていることを再確認することができました。

 私は、皆様から受けたご恩をお返しするために、将来の65年目、100年目、未来永劫に絶えず想いをつなぎ、運動の最大化を目指し、力強く発展させていく決意をもって誓い申し上げます。そのためには、メンバーが本来のJCが持つ目的を深く理解し、伝統と革新の融合で、地域の未来を見据えた独創的な価値と機会を提供し続ける必要があります。このような逆境でも貫く信念を持ち、私たちが目指す「明るい豊かな社会の実現」に向けてメンバーとともに全力をもって邁進してまいります。 

 

 

2. 会員拡大と共感の波及が創る未来“全委員会統一事項”

 三島青年会議所の目的は社会開発と定款に定められています。私たちはこれまで、まちを想い、大胆な運動を掲げ挑戦し、その大きな機会を通じて自らの成長につなげてまいりました。そして、今後も時代の変化に先駆ける組織として新たな輝かしいリーダーを育成するためには、組織の未来の扉を開ける鍵をもつ新入会員を積極的に迎え入れる必要があります。志を共にする新入会員を増やすために重要なことは、私たちの想いが運動や活動の一つひとつの行動に現れ、それが青年の琴線に触れることで得られる共感です。この共感から生まれた想いこそが、リーダーシップの光源になると確信しています。また、活動の中で新入会員やオブサーバーの発想を尊重する意識を常に心掛け、一つひとつの役割を丁寧に提供し、参画した実体験によって、私たちのリーダーシップの素晴らしさが伝わり共感の輪が広がっていきます。そして、会員拡大の最速化を図ることが大切です。それは、各委員会や各事業が単体としてではなく連携して取り組むことで実現されます。この連携の中で必要不可欠なのはメンバーが一丸となることです。次世代のリーダーとなる新入会員を積極的に迎え入れることで、組織に新たな風が吹き込まれ、新たな発想によってさらなる価値を創造すると同時に、リーダーたちが齎す共感の好循環を創出してまいります。

 

 

3. 未来を創る人財開発 

 全国のメンバーの平均在籍年数は3.5年という中、近年のパンデミックの影響で約3年もの間、対面での運動やコミュニケーション、JCについて理解を深める機会が減少しています。これは会員開発と会員拡大の両面で、大きな打撃であると考えます。これまでは、対面による例会や委員会、懇親会などの交流を通じて、JCの歴史、社会的な役割、あるべき姿などを関わる方々から伝え知ることができ、これにより、多くの仲間が増える仕組みがありました。このような機会は、仲間との信頼関係や組織の理解を深めるだけでなく、相互理解を確認し、JCの未来を描く場でもありました。今、インパクトのある効果的な運動を展開し、問題解決に向けた成果をあげ、市民からの共感を得るために必要なことは、私たちの組織や運動について、メンバーの誰もが組織の価値を理解し、明確に説明できる基盤を構築することです。これによって、組織に対する共感が生まれ、私たちの社会的な役割が明確になり、組織価値の向上につながります。また、多くの交流を通じて、会員同士の友情を深めることも重要です。事業を築く過程にはさまざまな試練が待ち受け、それらを乗り越えるためには多くの仲間の協力が必要不可欠です。この試練を乗り越えた後、絆がより深まり、これがその後の運動をさらに向上させる起爆剤となります。私たちは、多くの青年世代の方に意識変革を促し、まちを想い、未来を創造する仲間づくりをすることにより、どの時代でも揺るぎない組織体制を築き、持続的な会員開発が実現できるよう活動してまいります。 

 

 

 

4. 世界とのつながりで未来を創る 

 パンデミック発生の影響で停滞していた人びとの動きは、少しずつ日常に戻りつつあります。その間に急速に普及したIT技術の活用は人びとの交流を革新的に進歩させました。これによって、世界は身近なものとなり、このまちにもつながりを活かす機運が高まっています。また、グローバル化が進んでから約30年が経ち、世界を魅了するさまざまな文化や資源を有する三島市周辺地域にも多くのインバウンドが訪れました。それは、私たちも同様に世界の文化や資源に惹かれる要素があることを示しています。一方で、地域における問題や課題も互いに関連する部分があり、それが一つに結びついて、国際の諸問題へとつながっているのも事実です。JCは世界的な組織です。その規模を活用し、メンバーや参加者に、世界の人びととのつながりを広げる機会を提供することができます。世界の人びととの交流を通じて、問題や課題を探求し、解決策を見つけ出し、共有することで持続的な運動の発端になると考えます。また、国際交流の機会を通じて、将来の主要な技術などの活用に向けた取り組みを行うことで、三島市周辺地域にイノベーションを齎す契機となり、新しいまちづくりの創造につながると考えます。これにより、参加者の視野が広がり、思考や行動の質が変化することで、組織だけでなく、地域に対してもより良い変化を齎すことができます。私たちは、国際的な機会を地域へ提供し、まちの未来を創ってまいります。

 そして、私たちの想いは、子どもたちの心をより良い方向に導くことです。子どもたちが周りの人たちを大切にし、まちを愛する力を育むことが必要です。私たちは、子どもたちがいつの日か大人になり、住むまちを愛することが未来に希望を託す運動となるよう創造し展開してまいります。

 

5. 子どもたちの未来を創る

 子どもたちには、相撲というスポーツを通じて礼節を学び、努力や思いやりなどの社会生活に必要な徳性を養う場を提供しています。そして、幼少期の経験はずっと心に残る思い出となり、大人になっても忘れることはありません。勇気を出して参加する子どもたちに、応援の輪を広げ、会場全体が一体となり、子どもたちにとって生涯に残る素晴らしい思い出の機会を提供する必要があります。わんぱく相撲は、小学生を対象にした大会で、各地LOM(200地区)の予選大会からスタートし、県大会、全国大会まで進むことができます。出場選手は約40,000人に及び、小学生向けの相撲大会としては、最も規模の大きな大会です。本年度は、三島青年会議所が県大会を主管するにあたり、各地から集まる参加者の皆様には、子どもたちの輝かしい姿をご覧いただくとともに、開催地である三島市周辺地域の魅力も知っていただきたいと考えています。わんぱく相撲は、保護者や関係諸団体からも期待されており、地域社会においてもJCの主要な事業の一つとなっています。今後もさらなる定着に向けて尽力してまいります。

 

 

6.まちのビジネスが創る未来

 近年の地域経済を考えると、パンデミックの影響によって大きな損害を受け、ロシアとウクライナの戦争を発端に物価の高騰なども起こり、経済的な影響を受けました。さらに、政府からの救済策として行われたゼロゼロ融資の返済が始まり、アフターコロナ時代でも予断を許さない状況が続いています。このような状況では、企業の衰退だけではなく地域の景気に不透明感が漂い続け、住民が経済的に安心して生活できなくなるおそれがあります。したがって、まちの発展を目指すJCと、企業や個人の欲求を結びつける運動を展開する機運が高まっていると捉えています。私は、JCが持つネットワークを最大限に活用し、多くの方々とつながりを増やし、ビジネスの機会を創出する場を提供する必要があると考えます。また、ビジネスに関する新しい情報が共有される場を提供することで、人脈を広げ、仕事を与え合うだけではなく、地域に新たなビジネスの可能性をもたらす機会を創出することも重要です。そして、このような機会を一時的なものではなく、継続的に提供できる仕組みづくりを進め、地域経済の発展に向けた協働関係を構築することが、持続可能で好循環な地域経済づくりに重要な貢献になります。青年経済人が多く集まるJCが果敢に行動を起こし、地域におけるビジネス活性化を推進してまいります。

 

 

7. 組織運営の進展が創る未来

 総務と財政に関わる担いは三島青年会議所の中でも重要な役割を果たしていると認識されている反面で、黒子役のように補助的なイメージもあるかもしれません。私は組織運営がJCの使命を具現化する起点になると考えています。なぜなら、議案や資料に書かれる一文字一文字、一文一文が私たちの運動そのものを表現しているからです。また、お金の管理や会議を運営し、理事会や総会の場で議論を経て運動を実現するための機会を提供しています。この組織運営が時代に適した形で常に改善されることで、成果の高い事業を生み出すことにつながると確信しています。過去の在り方に留まることなく、より良い組織運営のために新しいアイデアやプロセスの取捨選択を行いながら組織運営の進展に向けて挑戦することが必要です。また、JCでは災害が発生した際に、社会への奉仕を優先することを前提としており、積極的に災害復旧と復興支援の活動を行っています。もしも有事が起きた場合には、迅速に行動できるよう、行政や他の団体と連携し、地域に根ざした活動に取り組んでまいります。

 

 

8. 終わりに

私のJC活動は、極めて単純な動機から始まりました。地元は熱海市、職場は伊豆の国市である私は、先輩から勧誘を受け、自身の人脈拡充と仕事につなげるために入会しました。当初は組織に馴染めずあまり活動していませんでしたがメンバーの熱意と声掛けにより徐々に馴染んでいきました。そして、会員減少による組織存続が危ぶまれた2019年度、役職を全うしたことで三島青年会議所への所属意識や一体感を初めて感じることができました。しかし、この時の私は、JC運動の真の価値や意義を理解していないまま、自身の役目のみにフォーカスし、その全うした体験により少し高慢になっていたのです。その後、世界的パンデミックや不測の事態により活動が制限されたことで、JC運動の原点に立ち返る機会を得て、これまでの私の考えは見直されていきました。そして、私たちの存在価値は「まちの発展」であるという結論に行きついたのです。

「明るい豊かな社会の実現」JCが掲げるこの理想を達成した後、私たちの役目は終わるのか。私は、この問いに迷うことなく自信を持って答えます。現代の社会は多様性や持続可能性を重視していますが、この理想の実現に近づくにつれ、それらは理想から目標に変わり、新たな理想が生まれるのです。その都度、私たち三島青年会議所のメンバーは、社会の変化とともに新しい課題や問題に取り組み、真のリーダーシップを示す役割が求められていきます。私もそうであったように、どの時代も一人の青年が成長し続ける場所、それがJCです。JC活動は、真摯に取り組むことで、多くの価値ある経験を得ることができ、成功も失敗も、すべてが私たちの成長の糧となるのです。そして、青年が青年へと、次のステップへ進む力を育む絶好の機会と場を提供することができます。私たちの使命は、JCの価値や存在意義を常に探求し、これからの世代に伝え続けていくことです。この貴重な役割と価値を、永劫的に持続させる強い想いを胸に、共に未来を創ってまいりましょう。